職人の美意識を空間に宿し、手仕事の緊張感までデザインする“魅せるファクトリー”
KURUMA WRAP ファクトリードッグ
クルマを包むという行為は、単なる施工ではなく、わずかなズレも許されない繊細な感覚と、素材と向き合う深い集中力によって成り立つ仕事です。本計画では、その張り詰めた手仕事の美しさを空間の中に映し出すことを目指し、無機質で雑然としていた作業場を、職人の技と感性が際立つ“魅せるファクトリー”へと再構築しました。
設計の軸としたのは、機能を整えることではなく、機能そのものを空間の美へと昇華することでした。水貼りに適した高通気性のフロア、シートの微細な歪みさえ捉える高照度の照明、作業の流れを軽やかにするマグネット対応の壁面。そうした一つひとつの要素を、単なる設備としてではなく、職人の感覚を研ぎ澄ませるための“舞台装置”として捉えています。まっすぐに伸びるライン照明は、視認性を確保するだけでなく、空間全体に静かな緊張感と凛としたリズムを生み出し、この場に流れる集中の密度を可視化しました。
内装はシックなグレートーンで統一し、余分な情報を削ぎ落とすことで、主役である車体とラッピングの色彩がひときわ鮮やかに立ち上がる構成としています。背景を整えることで、色も曲面も光も、すべてがより研ぎ澄まされて見えてくる。作業場でありながら、仕上がりの一瞬一瞬が展示のように美しく映える空間を目指しました。
さらにミラー壁面は、あらゆる角度から仕上がりを確認するという機能を担いながら、空間に奥行きと広がりを与え、視線の中にもうひとつの風景を生み出しています。実用のための装置でありながら、同時に空間の表情をつくる要素でもある。そうした機能と演出の重なりによって、この場は単なる工場ではなく、プロフェッショナルの感性と技術が静かに際立つ空間へと変わっていきました。
この計画が目指したのは、作業効率を高めるだけの場ではありません。職人が向き合う一台一台のクルマ、その所作、その集中、その誇りまでもが美しく見える場所をつくること。機能を突き詰めることで、空間はここまで美しくなれる。そのことを体現する、KURUMA WRAPのためのファクトリーです。
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2025年8月
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企画
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デザイン
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設計
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クライアント
デコラティブシステム株式会社
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クリエイティブディレクション
岡森 真実
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デザイン
塙 崇之 / 岡森 真実
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グラフィックデザイン
塙 崇之
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設計
上柳 将樹 / 岡森 真実
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施工
株式会社森島工務店 / デコラティブシステム株式会社
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撮影
土田 紘