グラフィックによる明度設計で、視認性の低い通路を華やかな体験空間へ再構築
株式会社イトーキ 滋賀⼯場 工場見学ルート
自社製品の保管・組立・出荷を一手に担うイトーキ滋賀工場。その中心部に位置する共有通路は、作業エリアを見下ろす特徴的な構造を持ちながらも、これまでは単なる移動のための空間として機能していました。本計画では、この通路を“通り過ぎる場所”から、イトーキのものづくりと思想に触れる“体験の場”へと再構築することを設計の主題としました。
設計において着目したのは、照度が低く、照明の増設も難しいという制約そのものを、空間表現の起点に変えることでした。そこで導入したのが、グラフィックによる「明度設計」です。壁面全体に視覚的な明るさと彩りをもたらすビジュアルを展開することで、物理的な光量に頼ることなく、空間の印象そのものを軽やかに更新。環境条件を補うための装飾ではなく、制約を受け止めながら空間価値を引き上げるデザインとして構成しました。
コンテンツは、見学者の動線に沿って連続的に展開されています。歩みを進めるごとに、工場の役割、製造工程、イトーキの事業領域、歴史、新製品、そして社会貢献活動へと理解が自然に広がっていく構成とすることで、情報を一方的に提示するのではなく、移動そのものが学びへ変わる体験を目指しました。見学ルートを情報の通路ではなく、企業の姿勢や積み重ねを身体感覚とともに受け取れるストーリー空間として編集しています。
また、この計画では、イトーキが大切にする“働く環境”へのまなざしを、工場見学という場に置き換えて表現することも意図しました。製品を生み出す現場の背後にある思想や時間の蓄積を、視覚的な魅力とともに伝えることで、ものづくりの現場に新たな意味を与えています。単なる見学導線ではなく、働くこと、つくること、支えることの価値に触れる場として再定義することで、企業理解をより深く印象づける空間となりました。
かつては冗長だった通路は、いま、イトーキのストーリーを静かに語りかける体験型のコンテンツ空間へと生まれ変わっています。デザインの力によって、移動の時間は学びと発見の時間へ変わり、工場という実務の場に、もうひとつの価値を立ち上げる計画となりました。
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2024年8月
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企画
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デザイン
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グラフィックデザイン
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設計
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クライアント
株式会社イトーキ
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クリエイティブディレクション
塙 崇之
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コンストラクションディレクション
上柳 将樹
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デザイン
塙 崇之 / 岡森 真実
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グラフィックデザイン
佐藤 美和子
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設計
上柳 将樹 / 岡森 真実
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制作
川部 一貴 / 金光 喜郎(デコラティブシステム)
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施工
デコラティブシステム株式会社
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撮影
土田 紘